新築マンションはなぜ高い?東京23区の価格上昇の背景を読み解く
建設費・土地価格・供給減少から見る「新築高騰」のメカニズム
原材料費高騰・再開発・建築基準の変化など、価格上昇の理由をわかりやすく分析していきます。
まとめ
- 東京23区で新築マンションの価格が過去最高を更新している背景には、原材料費・人件費の上昇、土地価格の高騰、供給減少、再開発集中、建築基準の厳格化といった複合的な要因があります。
- 資材高と職人不足により建設コストは下がらず、都心の土地は再開発によってさらに高値化。
- 新築物件自体の供給が減り、小規模・高価格化が進んでいます。
- 結果として、新築は富裕層中心の市場にシフトし、中古マンションへの需要が増加しています。
- 東京の新築価格は、今後も「高止まり」が新たな常態となる可能性が高いといえます。
1億円時代に突入した東京の新築マンション
2025年、首都圏の新築マンション平均価格は、東京23区に限ると、平均価格は1億円を突破しました。
10年前(2014年)の平均価格は約5,000万円台だったことを考えると、この10年間でほぼ2倍近い上昇です。
「なぜこんなに高いのか?」
その答えは、単に“人気エリアだから”ではなく、建築コスト・土地価格・供給構造・法規制・再開発といった多層的な要因があります。
東京23区の新築価格が上昇した背景を読み解きます。
建設費の高騰 ― 原材料費と人件費のダブル上昇
まず最も大きい要因が、建築コストの上昇です。
原材料費の高騰
ウクライナ情勢や円安の影響により、鉄筋・コンクリート・ガラス・木材といった建設資材の価格が軒並み上昇しました。
- 鉄筋価格:約1.5倍(2019年比)
- コンクリート価格:約1.3倍
- 木材価格:ウッドショック以降も高止まり
さらに運送費や燃料費も上がり、施工現場までの物流コストも上昇しています。

建設労働者の人件費上昇
少子高齢化による職人不足により、建設現場の人件費はこの10年で約30%前後上昇している工事もあります。
建設業界だけではなく、日本全国の様々な業界で人材不足が始まっています。そのため、業界をまたいだ人材の争奪戦が進み、より不人気職種である建設業界への影響を大きくしています。
特に都心のタワーマンションなどでは、熟練技術者や大型機械オペレーターの確保が困難で、1㎡あたりの建築コストが地方よりも2倍近く高い水準になっています。
原材料+人件費、この2つの要素だけで新築価格の上昇幅の半分以上を占めるとも言われます。
土地価格の上昇 ― 都心部は“供給ゼロ”状態
次に大きな要因が土地価格の上昇です。東京23区では、再開発や地価上昇が続き、新たに分譲用地を確保することが非常に難しくなっています。
再開発で土地が高値化
渋谷・虎ノ門・品川・日本橋・豊洲など、主要エリアではオフィス・商業施設・住宅が一体化した再開発が進行中。
再開発地では「地価が上がる→地権者が売らない→供給が減る→さらに価格上がる」という循環が起き、結果として、デベロッパーは高値で土地を仕入れざるを得ない構造が続いています。
既存住宅の建て替え用地も確保困難
東京はすでに成熟した都市であり、新規の大規模用地はほぼ出尽くしています。そのため、近年では「既存ビルや工場跡地の買収→建て替え」方式が主流となっています。
しかしこの手法は時間と交渉コストがかかるため、供給スピードが遅くなり、1戸あたりの販売価格が上昇する傾向にあります。
供給の減少 ― 小規模・高価格化が進む新築市場
2020年代以降、新築マンションの供給戸数そのものが減少しています。
用地確保難による開発規模の縮小
都心部では大規模マンション用地が不足しており、50戸以下の“小規模高価格マンション”が増加しています。
開発規模が小さいと、
- 土地コストを分散できない
- 設備投資の効率が悪い
→ 結果、1戸あたりの販売価格が上昇します。
デベロッパーの戦略変化
かつては「分譲数を増やす量的拡大」でしたが、今は「高級志向・高付加価値型」にシフトしています。
例:
- 三井不動産「パークマンション」シリーズ
- 三菱地所「ザ・パークハウス グラン」
- 野村不動産「プラウドタワー」
これらは“富裕層向け・永住型”の高価格帯物件であり、1戸あたりの利益を重視するモデル。結果的に平均価格が押し上げられる構造となっています。
建築基準・安全基準の厳格化
東日本大震災以降、建築基準法や関連法規の見直しが進み、耐震・防火・断熱などの性能基準が一段と厳格化しました。
- 免震・制震構造の採用
- 複層ガラスや高断熱サッシの標準化
- 省エネ基準(ZEB・ZEH-M Ready)への対応
これらは確かに住まいの安全性や快適性を高める一方、建設コストを1割以上押し上げる要因にもなっています。
さらに、長寿命化や脱炭素対応による高性能設備(太陽光発電・蓄電池・断熱材)の導入が進み、建設原価に反映されています。

再開発ブームと“ブランド立地”の集中化
東京23区では再開発が次々と進み、新築マンションの多くが「再開発エリア限定」で供給されています。
再開発=高価格化の構図
再開発地は街並み・商業施設・交通利便性が整備されるため、ブランド価値が価格に上乗せされます。
例:
- 虎ノ門ヒルズエリア:坪単価700万円超
- 豊洲・勝どき:湾岸ブランド化
- 品川・日本橋:再開発+複合用途で高値維持
再開発によって街の魅力が高まる一方、「普通の新築マンション」が少なくなり、結果的に“高級物件しか残らない”状態になっています。
金利・海外需要・為替の影響
低金利が続いたことによる購買余力の拡大
長期的な超低金利環境から、金利の引き上げが今後予想され、早期に住宅の購入を検討する人が増加。住宅ローンの借入額が増加 → 買える価格帯が上昇 → 価格を押し上げているという状況です。
外国人投資家による高値購入
円安とインバウンド回復により、香港・シンガポール・台湾などの投資家が東京の高級マンションを“実物資産”として購入。これも高価格帯を底上げしています。

中古マンションとの価格差拡大
新築の供給減少と価格高騰により、中古マンション市場が活況です。
| 指標 | 新築マンション | 中古マンション |
|---|---|---|
| 平均価格 | 約1億円(23区) | 約7,500万円 |
| 平均築年数 | 新築〜築3年 | 築15〜25年 |
| 坪単価差 | 約1.5倍 | ― |
築浅中古は「新築プレミアム(初期値下がり)」を避けられるため、資産性の観点から人気が高まっています。
現在の「新築は高すぎる」現象は、実は“中古の再評価”という副作用を生んでいるのです。
建設費は下がらず、価格は高止まりへ
建設費や人件費は構造的に下がりにくく、土地供給も限られているため、東京の新築マンション価格は「高止まり」が続くと予想されます。
国土交通省の建設資材価格指数も依然として高水準で推移しており、短期的な値下がり要素は乏しい状況です。
ただし、金利上昇や供給過多になれば一時的な調整はあり得ます。とはいえ、「以前の価格帯(5,000万円台)」に戻る可能性は極めて低いでしょう。
東京23区の新築価格は、もはや“新しい常識”のステージに入っています。
高価格の裏にある「都市の成熟」と「建設構造の変化」
東京の新築マンションが高騰しているのは、単なる地価上昇ではなく、都市の成熟とコスト構造の変化が背景にあります。
- 原材料費・人件費の上昇
- 土地供給の枯渇
- 建築基準の厳格化
- 再開発による高級志向
- 供給減によるプレミア化
これらが重なり合い、「新築=富裕層向け」「中古=実需層向け」という二極化が進行しています。
“新築が高い”のではなく、“新築を建てるコストそのものが高くなった”それが、現代の東京マンション市場の実像です。



