構造別の耐用年数と「建て替え」の現実
RC造・SRC造・鉄骨造の寿命目安と再生事例
マンションの構造的な寿命はどれくらいでしょうか?人が作ったものは永遠ではありません。日本で最初にマンションが作られてから60年以上が経過しています。
ここまで経年で建て替えられたマンションはいくつかありますが、あまりうまく話しが進まないケースも多くあります。
実際に建て替えに成功したケースと、建て替えではなく再生をしたケースを追います。
まとめ
- マンションの耐用年数はRC造で約60〜80年、SRC造で70〜100年、鉄骨造で40〜60年が目安ですが、実際の寿命は管理と修繕次第です。
- 建て替えは合意形成や資金負担のハードルが高く、実現率は1%未満。そこで注目されるのが「再生」です。
- 外壁や配管更新、エレベーター後付け、共用部リノベーションなどで機能と資産価値を高める方法です。
- 再生は建て替えの3分の1〜5分の1の費用で済み、環境負荷も少なく、100年使える長寿命マンションへの道を開きます。
建物の「寿命」は構造だけで決まらない
マンションやビルの寿命というと、「RC造は50年」「鉄骨造は30年」などといったおおよその数字がよく語られます。
しかし実際には、構造そのものの強度よりも「メンテナンス」と「再生計画」が寿命を大きく左右します。
特にRC(鉄筋コンクリート)やSRC(鉄骨鉄筋コンクリート)造の建物は、適切な修繕と管理が行われれば築60年を超えても使用可能です。
実際にヨーロッパでは組積造建築と言われるRCに似た施工方法でコンクリートの代わりに鉄筋にレンガを通す施工方法で100年を優に超える物件が多数あります。
日本においては、建て替えには住民合意・資金・法規制といった現実的な壁があります。そのため、「再生」「改修」「部分更新」という選択肢が増えています。
各構造ごとの建築寿命と耐用年数の目安
構造によって建物の耐久性は大きく異なります。以下は国税庁の「減価償却資産の耐用年数表」や実務上の耐久データをもとにした目安です。
| 構造 | 概要 | 法定耐用年数 (税務上) | 実際の耐用年数 (メンテナンス次第) |
|---|---|---|---|
| RC造(鉄筋コンクリート造) | コンクリートと鉄筋で構成。住宅で最も一般的。 | 約47年 | 約60〜80年 |
| SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造) | 鉄骨を鉄筋コンクリートで包む。高層マンション向き。 | 約47年 | 約70〜100年 |
| S造(鉄骨造) | 鉄骨フレーム中心。軽量・中層建物に多い。 | 約19〜34年 | 約40〜60年(重量鉄骨) |
鉄骨造は軽量化と施工性に優れるものの、錆びやすく、耐用年数は短め。一方RC・SRC造は重量がある分、長期使用とリノベーションに強い構造です。
ポイント:
「法定耐用年数」はあくまで減価償却の目安であり、実際の“寿命”とは別物。適切な防水・防錆・補修がされていれば、倍以上使用できるケースもあります。
コンクリートの劣化と補修の実際
RC・SRC造の寿命を左右する最大要因は「コンクリートの中性化」と「鉄筋の腐食」です。コンクリートは時間とともにアルカリ性を失い、中の鉄筋が錆びて膨張、ひび割れ・剥落・漏水などを引き起こします。
【主な劣化サイン】
- 外壁タイルの浮き・剥がれ
- 鉄筋露出やサビ汁
- 屋上防水の膨れ
- コンクリートの欠損・白華(エフロレッセンス)
これらは大規模修繕で補修可能です。一般的に、12〜15年周期で行われる外壁・防水工事を適切に実施すれば、耐久年数をさらに20〜30年延ばすことができます。
「建て替え」は理論より現実が難しい
築50年を超えるマンションでは、建て替えを検討する声が出ます。しかし、実際に建て替えが実現するケースは全国で全体の1%未満と言われます。
■ 建て替えが難しい主な理由
- 住民の合意形成が困難
建て替えには区分所有者の5分の4(80%)以上の同意が必要(マンション建替え円滑化法)。高齢化・居住者の不在・賃貸オーナーの利害などで合意がまとまりにくい。 - 資金負担の問題
建て替えには1戸あたり2,000万円程度と高額な再取得費用が発生。再建費を負担できない世帯が多く、合意形成を阻む要因に。 - 敷地条件と法規制
現行の建築基準法では「容積率・高さ制限・日影規制」などにより、元の戸数を再建できないことがある(=再建しても住める人が減る)。
例:旧耐震基準(1981年以前)のマンションでは、現行法下で再建すると階数が減るケースも多く、事業採算が合わない。
「再生」という選択肢 ― 建て替え以外の道
建て替えが難しい現実の中で、今注目されているのが「再生(リノベーション型改修)」です。
これは建物を壊さずに、設備・外観・共用部を一新する方法で、費用を3〜5分の1程度に抑えつつ資産価値を再生できます。
外観・共用部のリニューアル
- 外壁タイルの再貼り、塗装の更新
- エントランスのデザイン刷新、植栽計画の見直し
- LED照明・宅配ボックス・オートロックの新設
→ 建物の印象が大きく変わり、築古でも“新築同等の外観”を実現。分譲価値・賃貸競争力が高まる。

エレベーターの後付け・更新
昭和〜平成初期の5階建て団地や低層マンションでは、エレベーターがないケースが多く、住民高齢化により課題化しています。
【エレベーター後付けのポイント】
- 設置費用:約3,000〜6,000万円(棟全体)
- 各戸負担:約100万〜300万円前後
- 公的補助金制度あり(自治体による)
段差解消・バリアフリー化を同時に行うことで、「高齢者に優しい再生」+「資産価値アップ」が可能になります。
設備インフラの再生
- 給排水管の更新(サビ・漏水防止)
- 電気容量の増強(EV・IH対応)
- インターネット・宅配ボックス・防犯カメラの設置
これらの“見えない部分”の再生は、住みやすさだけでなく、所有物件を売却する際の評価にも直結します。
再生事例 ― 築古でも価値を取り戻すケース
■ 事例①:東京都江東区(築45年RC造団地)
外壁再塗装・配管更新・エントランス改修・宅配ボックス設置を実施。再販価格は改修前より約25%上昇。共用部の美観向上が若年層購入者の関心を高めた。
■ 事例②:神戸市SRC造マンション(築48年)
エレベーター後付け+耐震補強を行い、「高齢者でも住み続けられる安心設計」に。総事業費の約2割が補助金で賄われ、管理組合負担を軽減。
■ 事例③:横浜市(築50年鉄骨造)
老朽化に伴う漏水問題を機に、配管と屋上防水を更新。建て替え案から再生案に切り替え、総費用を半減。
再生は「壊さずに延命する」という発想から、「時代に合わせて再設計する」フェーズへ
築古でも、維持管理×デザイン再生で価値を取り戻すことができます。
将来の方向性 ― “長寿命マンション時代”へ
国土交通省は「長寿命化マンションモデル事業」を推進中。建て替えよりも、修繕・再生による100年利用を目指す流れが加速しています。
【今後のキーワード】
- ストック活用型社会:壊すより活かす
- エコ・脱炭素対応:建替えより再生の方がCO₂削減効果が高い
- 共用部リノベ×高齢化対応:段差解消・エレベーター・スロープ設置
これからは「築年数=寿命」ではなく、“メンテナンスの質と管理の持続力”で寿命が決まる時代です。
建て替えよりも「再生」を現実的に考える時代
| 比較項目 | 建て替え | 再生(リノベーション) |
|---|---|---|
| 目的 | 新築同等の建物を建て直す | 現状建物を延命・刷新 |
| 費用 | 高(1戸数千万円) | 低(1戸数百万円) |
| 必要同意 | 所有者の5分の4以上 | 管理組合多数決で可 |
| 工期 | 約3〜5年 | 約1〜2年 |
| 環境負荷 | 高い(解体・廃材発生) | 低い(CO₂削減) |
建て替えは理想だが、現実的には「再生」が主流。適切な修繕と再設計で、建物は100年でも使い続けられます。
築古マンションは“終わり”ではなく、次の時代の住まい方へ進化させる素材と考えるべきでしょう。



