高層マンションは地震に強い?
免震・制震・耐震構造の違いと選び方
高層マンションの購入を検討している人はどうしてもその高さゆえに、地震の対策はどうなっているのか気になるはずです。結論から言うと、通常のマンション以上に高層マンションの方が地震対策はしっかりされています。
ただ、それぞれの構想マンションごとに免震・制震・耐震構造と地震に対して対策を取っている構造は異なります。ここではそれぞれの地震に対する構造の違いについて解説します。
まとめ
- 高層マンションの耐震性能は「耐震・制震・免震構造」に大別されます。
- 耐震構造は建物を強化して地震に耐える方式で、コストを抑えながら安全性を確保
- 制震構造はダンパーが揺れを吸収し、体感揺れや家具転倒を抑えます。
- 免震構造は建物下の装置で地震動を遮断し、上部の揺れを最小化。ただし初期費用や維持費が高いのが課題です。
- 安全性は構造方式だけでなく、地盤・設備・非常用電源・管理体制を含めた総合力で判断すべきです。
地震の揺れに対する対応方法で決まる
「低層=必ず安全」「高層=必ず安全」どちらが安全か?答えはそのどちらとも限りません。構造方式(耐震・制震・免震)と地盤と建物自体の維持管理の総合力で安全性は決まります。
揺れをただ“小さくする”のか、“壊れない”ことを最優先にするのかで得手・不得手が異なります。
実際の住み心地(停電時のエレベーター、長周期地震動での揺れ時間、上層階の酔い)まで含めて選ぶのが正解です。
また、例えば、六本木ヒルズでは地震の揺れに対する対策だけではなく、停電時の自家発電装置の装備や街一帯での防災拠点機能を揃えています。
そういった、マンションが持つ災害に対する全般の姿勢も考慮に入れたい所です。

3つの構造方式
| 方式 | 仕組み | 得意 | 不得意・注意点 | 向くケース |
|---|---|---|---|---|
| 耐震 | 柱・梁・壁を強くして変形に耐える | コスト抑制/設計自由度 | 上層階の加速度・家具転倒リスク、長周期で揺れが長め | 中層中心/費用バランス重視 |
| 制震(制振) | ダンパーで揺れエネルギーを吸収 | 中~高層での揺れの低減、改修で後付け可の事例も | 装置点検・部材更新コスト、計画次第で効果差 | 高層×居住性重視/既存建物の性能向上 |
| 免震 | 建物下に積層ゴム+滑り支承等を入れ、地盤の揺れを遮断 | 大地震時の上部揺れ大幅減、非構造部材の損傷抑制 | 初期コスト高、維持管理(点検・部材更新)と免震ピットの管理、津波や液状化は別論点 | 超高層・重要施設/家具転倒や設備損傷を抑えたい |
・長周期地震動
高層が“ゆっくり大きく”揺さぶられる波。上層ほど揺れやすく、めまい・酔いにつながることも。
・ダンパー
粘性(オイル)、履歴(鋼材降伏)、制震壁、TMD(屋上の重り)など種類あり。
・免震支承
天然ゴム・鉛プラグ入り積層ゴム、弾性すべり支承など。製品寿命と点検が重要。
“高層は地震に強い”の本当のところ
日本の高層RC造やSRC造は構造的に性能が高いため、倒壊回避の安全性は高水準に維持されており、制震・免震が必ずしも必要ではありません。
ただし住み心地レベル(上層の大きな揺れ、エレベーター停止、停電時の生活動線)は快適さが構造方式によって大きく異なります。
耐震のみの対応をしている高層マンションは大地震時に上層の上振れが大きくなりやすい一方、制震・免震は上層の体感揺れや家具転倒を減らしやすい、という傾向があります。
実際に東日本大震災の際に、高層マンションの上層階では水槽の水が全てこぼれ落ちるくらいの大きな横揺れが発生しました。
これは高層階への長周期での大きなブレが揺れとなって発生し起こった物です。
住み心地まで含めた考え方
耐震構造
- メリット:コスト効率/計画の自由度。構造体が頑丈で、損傷制御の考え方が明確。
- 体感:大地震時は上層で揺れやすい。家具固定・ガラス飛散対策が必須。
- 維持:装置系なし。一般的な躯体・仕上・設備の保守に集中できる。

制震(制振)構造
- メリット:ダンパーでエネルギー吸収。上層でも揺れ・加速度を下げ、めまい・酔い・室内被害を抑制。
- 体感:耐震より短く静かに収束しやすい。日常の微振動(風揺れ)低減にも寄与。
- 維持:ダンパーの点検・交換周期を確認。管理組合の長期修繕計画に計上されているかを見る。

免震構造
- メリット:大地震でも上部の揺れを大幅低減。仕上げ・設備・家具の被害を抑えやすく、早期復旧に強い。
- 体感:揺れ幅は小さいが“ゆっくり長く”感じることがある(設計次第)。上層酔い対策に有利な事例が多い。
- 維持:免震ピットの止水・排水・ごみ侵入管理、支承点検・交換費。地盤が悪いエリアは液状化・レベル差の検討が必要。津波・洪水は別途ハザード対策。

構造だけでは足りない“立地・設備・運営”の視点
耐震、制震、免震、いずれであっても建物の構造だけでは災害に完全に対処する事は出来ません。他にも意識しなければならないポイントはいくつかあります。
- 地盤・ハザード
- 表層地盤の増幅、液状化可能性、津波・洪水リスク。免震でも地域全体に影響が出る問題は避けようがありません。
- エレベーター計画
- 地震時管制運転・P波感知、台数/搬送力、非常用EVの有無。停電長期化に備える。
- 非常用電源・貯水
- 受水槽、水圧設備、非常用発電・蓄電、上層給水・トイレの使用可否。
- 非構造部材の耐震化
- 天井落下対策、ガラス飛散防止、設備機器の固定。
- 管理組合の力量
- 長期修繕計画にダンパー・免震支承・非常用設備更新費が織り込まれているか。点検報告が開示されているか否か。
“買う前に”確認したい項目
- 構造方式
耐震/制震/免震の別。ダンパー種類(粘性・鋼材・TMD等)、設置位置と台数。 - 設計年・基準
2000年代以降の高層性能設計か、長周期の揺れが発生する構造か否か。 - 地盤資料
地質・支持層・液状化判定、ハザードマップ。 - 免震なら
免震ピットの計画(止水・点検アクセス)、支承の寿命・更新費、過去点検記録。 - 制震なら
ダンパーの点検周期・交換費が長期修繕計画に反映されているか。 - エレベーター
台数/非常用EV/地震時運転仕様、機械室有無。 - 非常用電源
発電容量・運転時間、共用部・給水・通信の継続性。 - 非構造部材
天井・外装タイル・ガラス・間仕切りの耐震ディテール。 - 保険・訓練
火災保険・地震保険の付保状況、避難訓練や安否確認体制。
ライフスタイル別の選び方
- 上層の体感揺れを極力小さく
→ 免震 or 制震。家具転倒や子どもの恐怖感を抑えやすい。 - 初期費用を抑えつつ安全性確保
→ 耐震+非構造部耐震化+非常用設備が充実した物件。 - 早期復旧・事業継続(在宅ワーク重視)
→ 免震+非常用電源+上水計画が強い物件。 - 既存高層の性能底上げ
→ 制震ダンパー追加等の改修実績・計画をチェック。
よくある誤解
- 誤解1:高層=必ず安全
→ 構造方式・地盤・設備・管理の総合点で評価。 - 誤解2:免震なら何でも有利
→ 液状化・津波・浸水は別テーマ。支承維持費も忘れず。 - 誤解3:耐震は揺れる=危ない
→ 倒壊回避の安全性は高い。家具固定・二次被害対策が鍵。 - 誤解4:制震はメンテ不要
→ ダンパー点検・更新が必要。長期費用を確認。
高層マンションの耐震性で検討するポイント
高層マンションの地震安全性は、構造方式(耐震・制震・免震)× 地盤 × 設備 × 管理で決まります。
- 免震:上部被害を最小化しやすいが、点検と更新費が前提。
- 制震:揺れの体感・上層被害を抑えやすく、既存の性能向上にも有効。
- 耐震:コストと堅牢性のバランス。非構造部と生活インフラの対策で実力発揮。
最後は「家族にとっての許容リスク」と「復旧力」を軸に、数字(設計・点検・費用の根拠)で比較してください。
“倒れない”だけでなく、“住み続けられる”ことまで設計・運営されているかが、賢い選び方です。



