マンション管理組合と理事会の実態
「自分たちで建物を運営する」マンションの民主主義
戸建てにはないマンション内部の“自治”の仕組みを解説します。管理組合とは何か?理事会の役割とは?修繕決定の流れとは?等。トラブル事例も紹介します。
まとめ
- マンションは戸建てと異なり、建物全体を住民全員で運営する「管理組合」と、その実行部である「理事会」によって成り立っています。
- 理事会は、管理会社との契約、修繕計画、管理費運用などを決定する重要な機関です。
- 住民の自主的な活動のため、忙しさや対立によるトラブルもありますが、透明性と合意形成が健全な運営を支えます。
- 管理状態の良いマンションは資産価値の維持にも直結し、住民の主体的な参加が建物の寿命を延ばします。
- 理事会運営は面倒に見えて、実は“自分の資産を守る行為”そのものなのです。
マンションの“もう一つの顔”は「自治の共同体」
マンションは単なる住まいではなく、ひとつの自治体のような小さな社会です。廊下やエレベーター、外壁や屋上、配管や庭などは、すべて「共有財産」です。
これを維持・運営していくために存在するのが管理組合と理事会です。
戸建て住宅では自分で全てを管理しますが、マンションでは「みんなで建物を守る」という共同運営の仕組みが求められます。実際の理事会の役割・意思決定の流れ・よくあるトラブル事例を知っておきましょう。
管理組合とは?すべての区分所有者が組合員
管理組合の目的
マンションは区分所有法に基づき、建物や敷地を適切に管理するために管理組合を設立することが義務づけられています。
管理組合の目的は主に以下の3つです。
- 共用部分の維持・修繕
- 管理費・修繕積立金の徴収と運用
- 管理規約・ルールの制定と遵守
つまり、マンションを「長く、安全に、資産価値を保ちながら使う」ための組織が管理組合です。
全員参加の「共同オーナー」
管理組合の構成員は、マンションの全区分所有者(住民)。オーナーである以上、誰もが運営に関わる権利と義務を持っています。
戸建てでは「自分の家は自分で守る」。
マンションでは「みんなの家をみんなで守る」。
これが、マンション特有の“共同管理”の考え方です。
理事会とは?管理組合の「実行部隊」
管理組合全体での意思決定を円滑に行うため、代表者として選ばれるのが理事会(役員会)です。
理事会は、管理組合の執行機関にあたります。いわば「住民による自治の中枢」です。
理事会の構成
理事会は通常、
- 理事長
- 副理事長
- 会計理事
- 理事(数名)
で構成されます。
任期は1〜2年程度が多く、輪番制(全住戸が順番に担当)を採用するマンションも一般的です。
理事会の主な役割
| 分野 | 具体的な業務内容 |
|---|---|
| 管理 | 清掃・警備・点検業務の監督、管理会社との契約更新 |
| 財務 | 管理費・修繕積立金の収支確認、決算・予算案作成 |
| 修繕 | 大規模修繕の検討・見積もり比較・施工業者の選定 |
| 規約 | ペット飼育・駐車場・防犯対策などのルール策定 |
| 広報 | 住民説明会・総会資料の作成・情報共有 |
理事会は「住民代表の執行機関」であり、行政でいえば“市役所”のような存在です。

管理会社との関係:実務は委託、決定は住民
多くのマンションでは、清掃・会計・修繕管理などの実務を管理会社に委託しています。
ただし、管理会社はあくまで“請負業者”。最終決定権は管理組合(=住民側)にあります。
理事会と管理会社の役割分担イメージ
| 項目 | 理事会 | 管理会社 |
|---|---|---|
| 方針決定 | ○(主導) | △(提案) |
| 会計・徴収 | ○(承認) | ○(実務) |
| 修繕工事の実施 | ○(承認) | ○(発注・監理) |
| トラブル対応 | ○(判断) | ○(一次対応) |
管理会社に「任せきり」ではなく、「理事会が意思を持つこと」が健全なマンション運営の鍵です。
修繕決定の流れ:民主的プロセスで合意形成
大規模修繕や防犯カメラ設置など、数百万円〜数千万円単位の決定は、理事会だけでなく総会での承認が必要です。
修繕決定の流れ
- 理事会で検討・見積もり比較
- 管理会社・専門コンサルによる提案
- 理事会で内容精査
- 管理組合総会で可決(過半数・特別決議など)
- 契約・施工・報告
民主的に進めるために、情報共有と合意形成が不可欠。説明不足のまま進めると、後でトラブルの火種になります。
よくあるトラブル事例と対応策
トラブル①:理事会役員の「なり手不足」
最も多い悩みが、「誰も理事をやりたがらない」という問題です。仕事や育児で忙しい世帯が多く、輪番制でも辞退者が出ることがあります。
対策:
- 報酬(数千円〜)や役職手当を設ける
- 外部理事(第三者管理者方式)を導入する
- 役員業務をデジタル化(オンライン会議・電子決議など)
トラブル②:修繕計画をめぐる意見対立
「まだ使えるのに修繕は早すぎる」「費用が高い」など、住民間で対立することもあります。
対策:
- 修繕コンサルタントなど専門家を入れて客観的判断
- 工事の必要性を資料や写真で説明
- 段階的修繕や部分施工の提案
トラブル③:管理会社への不満・契約更新問題
「管理費が高い」「対応が遅い」など、委託業者への不満もよく聞かれます。
対策:
- 数年ごとに他社比較・見積もりを実施
- 契約内容を理事会で精査
- 理事長と管理員が定期的に協議を行う
管理会社も“パートナー”として付き合う姿勢が大切。
「丸投げ管理」はトラブルの温床です。
理事会運営を円滑にする3つのコツ
書面・データを整理し、引き継ぎを明確に
理事長が交代しても、過去資料が散逸しないように、
議事録・契約書・見積書などを電子化して共有。
外部専門家を上手に活用
法律・建築・会計の専門知識が必要な場面では、
管理士や修繕コンサルを入れることで意思決定がスムーズに。
「敵ではなく仲間」の意識で
クレームや対立が起こると理事会が萎縮しがちですが、
「自分たちの建物を守るための共同作業」と考えることが大切です。
理事会は“管理会社の監督機関”であると同時に、“住民の代表チーム”です。

管理組合が機能しているマンションは資産価値が高い
国土交通省の調査によると、管理状態の良いマンションは、築20年以上でも資産価値が約10〜20%高く維持される傾向があります。
- 理事会が定期的に開催されている
- 長期修繕計画が策定・更新されている
- 修繕積立金の滞納が少ない
こうした「健全な運営」を続けることが、結果的に住民全体の資産を守ることにつながります。
理事会と管理組合がマンションを長寿命にする
理事会・管理組合の運営は、時に面倒で、意見の衝突もあります。しかし、それこそがマンションという“共同社会”を支える民主主義の実践です。
- ひとりひとりが建物のオーナーであるという自覚
- 情報を共有し、合意を形成するプロセス
- 透明性のある意思決定
これらを積み重ねることで、マンションは単なる建物ではなく、「住民が育てる資産」へと成長していきます。
管理会社任せではなく、住民自身が建物の将来を決める。
それが“マンション民主主義”の本質です。



